『サピエンス全史(上)』ユヴァル・ノア・ハラリ・著

柴田裕之・訳 河出書房新社

ホモ・サピエンスが直立歩行することにより、子どもが小さく産ま

れ、それゆえに社会的絆を必要としたこと、火を手なずけることに

より、腸が短くなり、脳が大きくなったこと、「認知革命」により、

虚構を生み出し、より多くの集団を束ねることができるようになっ

たこと…。

農業革命は、史上最大の詐欺だった>

なぜなら、富の不平等も、栄養失調も、感染症も、すべて農業革命

の結果、起こったものだから。そして、農業革命に伴って起きた人

口爆発により、われわれはもう以前の生活には引き返せなくなった

のです。

問題を解決しようと思うなら、今よりも大きな視点を手に入れること。

私たちはつい最近までサバンナの負け組の一員だったため、自分の

位置についての恐れと不安でいっぱいで、そのためなおさら残忍で

危険な存在となっている。多数の死傷者を出す戦争から生態系の大

惨事に至るまで、歴史上の多くの災難は、このあまりに性急な飛躍

の産物なのだ

チンパンジーが一日五時間も生の食べ物を噛んでいるのに対して、

調理した食物を食べる人間は、たった一時間あれば十分だった。調

理をするようになったおかげで、人類は前よりも多くの種類の食物

を食べたり、食事にかける時間を減らしたりでき、小さな歯と短い

腸で事足りるようになった。調理が始まったことと、人類の腸が短

くなったり、脳が大きくなったことの間には直接のつながりがあっ

たと考える学者もいる

火の力は、人体の形状や構造、強さによって制限されてはいなかっ

た。たった一人の女性でも、火打ち石か火起こし棒があれば、わず

か数時間のうちに森をそっくり焼き払うことが可能だった

誰が信頼できるかについての確かな情報があれば、小さな集団は大

きな集団へと拡張でき、サピエンスは、より緊密でより精緻な種類

の協力関係を築き上げられた

ホモ・サピエンスはどうやってこの重大な限界を乗り越え、何万も

の住民から成る都市や、何億もの民を支配する帝国を最終的に築い

たのだろう? その秘密はおそらく、虚構の登場にある。膨大な数

の見知らぬ人どうしも、共通の神話を信じることによって、首尾良

く協力できるのだ

農業や工業が始まると、人々は生き延びるためにしだいに他者の技

能に頼れるようになり、「愚か者のニッチ」が新たに開けた。凡庸

な人も、水の運搬人や製造ラインの労働者として働いて生き延び、

凡庸な遺伝子を次の世代に伝えることができたのだ

人類は農業革命によって、手に入る食糧の総量をたしかに増やすこ

とはできたが、食糧の増加は、より良い食生活や、より長い余暇に

は結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生

につながった

歴史の数少ない鉄則の一つに、贅沢品は必需品となり、新たな義務

を生じさせる、というものがある

こうして没収された食糧の余剰が、政治や戦争、芸術、哲学の原動

力となった。余剰食糧のおかげで宮殿や砦、記念碑や神殿が建った

記録を粘土板に刻みつけるだけでは、効率的で正確で便利なデータ

処理が保証されるわけではないことは明らかだ。そうした処理には、

目録のような整理の方法や、コピー機のような複写の方法、コンピ

ューターのアルゴリズムのような、迅速で正確な検索の方法、そし

てこれらのツールの使い方を知っている、杓子定規の文献管理責任

者が必要とされる