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周囲の優しさや気遣いが母親に向かえば、防げたことだったかもしれない。

今年21歳と20歳の息子を育児してきた中で、20年以上育ててきても私の知識は満足なレベルにないと思う。中年の常識を持ってしてもまだまだ知らないことのほうが多い。私の無知が誰かを傷つけたり何かの事故を起こしていないのは、単に運が良いだけのことかもれない。

去年の2月に盆地に住む92歳の祖父母に会いに行った。

南国と言えども盆地の2月は寒い。

年寄りの朝は早く、その朝がまたさらに寒い。

キンキンに冷えた食卓で祖父母と朝食を終えると、半身不随の祖母が水屋をゴソゴソと漁る。

「何が探してる物があるん?探そうか?何?」

と言うと、どこかにローヤルゼリーがあるはず、と言う。

「ババァめ!そんな高くてマズいモンを隠し持っとんのか!」

と言えば「身体にいいの。コレを舐めてるから健康」とローヤルゼリーを崇拝。

「まぅも舐めたら病気が治るから…昨日の夜はココにあったけど…」

「わしゃマズいはちみつならいらんぞ」

難病の私の身体を心配して高いくせしてマズいはちみつローヤルゼリーを一心不乱に探す祖母。

心配しなくても大丈夫よ、いま悪化はしてないから。

祖母と私がローヤルゼリーに現を抜かしている間に祖父は、純正国産マイれんげハニーの瓶を取り出し、スプーンですくって湯呑の中にイン。おもむろに立ち上がって前方2mちょいほど先のポットに向かってエンジン全開で歩を進めやがった片目を失明している耳の遠い祖父。

「ちょっとーーー!ひーねー!なんかジジィ動き始めたでー!ヨタってんで!こっちババァがローヤルゼリーに忙しいからジジィみて〜」

一緒に連泊している叔母に助けを求める。

老老介護の現実はかくもきびしいのか…両親が別々に何かやりだしたらひとりじゃ手が足りん。

「あぁ、大丈夫。毎日ああやってはちみつ湯を作って飲むのよ。日課。いつも自分でやってるから手慣れたもんよ」

ホンマか?さっきお茶を豪快に急須からテーブルに注いでたけど。

湯を注いだ祖父は湯呑をスプーンでかき回しカコンカコンいわせながら食卓へご帰還。

「ほれ、まぅ。これを飲めばすぐに病気が良くなるぞ。もう帰ったら治ってるくらい、このはちみつは栄養があるから」

半身不随で片側の麻痺がひどい祖母が、片目を失明し箸でうまく食べ物がつかめない祖父が、関西から宮崎に里帰りできるほど身体が動く孫が難病なのを心配して、はちみつでなんとかしようとしてくれる。

それと同じことだったように感じられる、私にはこのニュースが。

若い母親は必死に子育てをしていたのかもしれない。

咳や鼻水が出ている体調不良の我が子を思えばこそ、日に2回も栄養価の高いはちみつを与えて回復させようという思いだったのかもしれない。

すべての母親の育児がもっともっとオープンで、例えば、通りすがりのおばちゃんとかが育児経験から気軽に道端でアドバイス出来るような環境があったり、子供の体調が悪い時に一緒に病院に行ってくれるような友人がいたり、何か困ってそうな母親の様子を察して知らない誰かが「何か手伝いましょうか?」と申し出るとか、そういう母親としての常識やら知識とは別の部分でカバー出来れば、最悪な事態は避けられるんじゃないかな、と思う。

子を亡くした母親の気持ちは、子を亡くした母親にしかわからないと思います。

でも今後この母親がたくさん悔いるだろうことは、同じ母親なら誰しも想像に難くない事です。

我が子を亡くした弟が同じように我が子を亡くした母親に葬式で言われたそうです。

「自分の子を亡くしたことは一生、忘れないよ。絶対に忘れることはないけど、いつか癒える時が来るからね」

どうぞしっかりと耐え必ず癒えてください、とそれを願ってやみません。

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(時事通信社 - 04月07日 20:01)