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【読んだ本メモ】原沢伊都夫『日本人のための日本語文法入門』(講談社現代新書)

みなさん、学生時代に現代国語の文法とか寝てましたよね?

僕は寝ていました。

何段活用とか、ツマンネーからね。

あの文法の時間がなんでツマンネーかったのかっていうと、古典文法を継承した日本人のための文法で、形式的な面が重視されていたからなのだ。

そんな学校文法は本当はもちろん大事なんですけど、日本語と全く異なる言語体系の外国人が日本語を学ぶために合理的で整合性のとれた文法理論があるのだ。

この本では、普通の日本人がわざわざ学ぶことがないこっちの日本語文法についてわかりやすく解説している。

まず日本語文は、動詞文・形容詞文・名詞文の三つに大別される。

ってところから始まる。

最初はあーナルホドねーってかんじで、だんだんと、おぉ日本語の基本構造をそんなに簡単に説明できるのか!ってなってくる。

読み進めてわかってくるとパズルを解く感覚にもなってくるよ。

全部読み終えたら、これでいつ金髪碧眼美女と出会っても日本語を教えてあげられる!!って思えちゃいます。

まぁ、基本的なところしか解説されてないし、冷静に考えると日本語の独特なニュアンスまで伝えるのは相当難しいのでこの本のみでそこまでまかなうのは無理だろうけど、こうやって教えていけばいいのかーってイメージくらいはつきます。

外国人のお友達が多いけども日本語文法を伝えられずに困った経験がある人なんかにはすっごい役立つと思います。

以下は個人的に覚えておきたいメモ、おもしろくてめっちゃたくさんになっちゃった。

●文の成分と述語との関係(格関係)を表す、格助詞の覚え方

(日本語文法)

鬼までか夜からデート

ヲ/ニ/マデ/ガ/ヨリ/カラ/デ/ヘ/ト

(学校文法)

鬼が戸より出、空の部屋

ヲ/ニ/ガ/ト/ヨリ/デ/カラ/ノ/ヘ/ヤ

●「〜が」と「〜は」の違い

学校文法では「主語-述語」の関係が教えられるけども、日本語文で多くは「主題-解説」の構造になっているものが多い。

 ルーザーが新宿で女に振られた。

これが

 ルーザーは新宿で女に振られた。

だと主題がルーザーになり

 新宿ではルーザーが女に振られた。

だと「新宿では」ってとこが主題になる。

これが「〜は」の効果なのだね。

学校文法だとガ格が主題化したものが主語だと教えられるけど、主題のことは教えてくれないのだね。

(僕は授業寝てたから教えてなかったのかわからないけど)

●格成分は述語との関係によって必須成分と随意成分日わかれ、述語と必須成分の組み合わせが文型と呼ばれる。

●自動詞と他動詞

自動詞:ヲ格成分を持たない

他動詞:ヲ格成分を持つ

※いずれも起点・通過点のヲ格を除く

「散歩する」は自動詞。

 ルーザーが新宿を散歩する。

新宿を、は散歩する場所(通過点)のヲ格なので、目的語ではない。

新宿を主体に受け身にできない。

自動詞と他動詞の組み合わせは四ツ。

?自他のペアになるもの

 開く 開ける 割れる 割る

?自動詞のみ(無対自動詞) 変化

 茂る (茂らせる)……他動詞では使役

?他動詞のみ(無対他動詞) 動作

 食べる(食べられる)……自動詞は受け身形

?自他動詞

 解散する 実現する

日本語の特徴として、自動詞が多いこと。

自動詞は自然中心としていて、他動詞は人間中心である。

また、英語は主語指向型言語で、動作主がなにかをするという表現をする。

一方日本語は話題指向型言語で、動作主は表面に出さずに、あたかも自然に成り行きでそうなったという表現を好む。

引っ越すことになりました、とか。

結婚式を挙げることになりました、とか。

掃除が終わりました、とかも。

自然のなかでの出来事のように表現するのが日本語の特徴なのだ。

●voice(態)

誰が主体になるかで助詞や動詞が変化することだね。

・能動文

ルーザーがブラック企業を爆破した。

・直接受身文

ブラック企業がルーザーに爆破された。

※影響を直接受けるものを主役にする

・間接受身文

ブラック社長がルーザーにブラック企業を爆破された。

※出来事全体から影響を受けるものを主役にする

自動詞の出来事でも受身文になるのが、日本語の間接受身文の大きな特徴なのです。

例)

雨が降った。

私は雨に降られた。

●使役系は見た感じそんなにややこしいことなかったのでスルー

●やりもらい動詞

・あげる

・くれる

・もらう

主体が「私」(ウチに含まれるグループ)か、それ以外(ソトに含まれるグループ)かで動詞が変わる。

例)

ルーザーが西野七瀬にお金をあげた。

ルーザーが私にお金をくれた。

西野七瀬/私がルーザーにお金をもらった。

ルーザーが西野七瀬にお金をくれた。

↑だと、西野七瀬はウチに含まれるグループ、すなわち自分の関係者に属していないといけない。

上の例はいずれもやりもらい動詞が本動詞はとして使われているけど、実際のやりもらい動詞は補助動詞として使われることがずっと多い。

例)

晶エリーがルーザーにセックス作法を教えてあげた。

晶エリーが私にセックス作法を教えてくれた。

ルーザーが晶エリーからセックス作法を教えてもらった。

↑いずれも意味的には「教えた」「教わった」でいいところ。

だけどもやりもらい動詞を使うことで日本人の思いやりの気持ちを込めることができるのだ。

 晶エリーがルーザーにセックス作法を教えてあげた。

というのはつまり、

 晶エリーがルーザーにセックス作法を教えてあげるという思いやりをあげた。

というような考え方になるのだ。

人間同士の和を尊重する気持ちが込められている。

この考え方に触れて育っていない外国人が日本人を習うとどうしても慣れなくて、「お母さん、私を生んで、ありがとう」というふうに、「生んでくれて」という表現をするのが難しいのだね。

●可能系

ルーザーは亀田興毅を殴る。

 ↓

ルーザーは亀田興毅が殴れる。

●自発系

出来事が自然に発生することを表す形式で、日常的に使われるのは主に「見える」「聞こえる」

ルーザーは戦艦武蔵を見る。

 ↓

(ルーザーに)戦艦武蔵が見える。

佐村河内が断末魔の悲鳴を聞く。

 ↓

佐村河内に断末魔の悲鳴が聞こえる。

ら抜き言葉

子音動詞:五段活用動詞 書く 読む→ら抜き言葉にならない

母音動詞:上一段・下一段動詞は 見る 食べる→ら抜き言葉になる

不規則動詞(カ変・サ変):来る する ら抜きしたりしなかったり

歴史的には、子音動詞の可能系もら抜き現象的なことがあったのだとか。

 書かれる→書ける

 読まれる→読める

だから、子音動詞に起きたら抜き現象が母音動詞に移り、可能形全体が統一した形式に向かっていると考えることができる。

言語学的にも、受身形との使用の混乱を避けるためにより簡素化した体系に向かっていると捉えることができる。

へぇー、これは面白い。

個人的にはら抜き言葉嫌いだけど、若者の言葉の乱れをお説教するオヤジに出会ったらこの説明で論破撃滅してやろう。

さ入れ言葉

使役表現にさをいれる。ときどき気持ち悪くなるやつ。

・子音動詞

 書く→書かせる→書かさせる

 読む→読ませる→読まさせる

・母音動詞 見る→見させる

 寝る→寝させる

・不規則動詞 来る→来させる

 する→させる

母音動詞と不規則動詞にはすでにさが入っているからさ入れ言葉にはならない。

謙譲表現や依頼表現で現れることが多い。

丁寧度を高めようという気持ちが働いているぽい。

個人的にはキモイと思っています。

気持ち悪い例)

頑張らさせてください

ユーチューバーやらさせてもらっています

アスペクト(相)

動きのいろいろな段階を表す形式。

ところ・はじめる・おわる・ある、などの動詞が補助的にくっつく。

くっつく動詞が自動詞か他動詞かで意味が変わってくる。

・〜ている

自動詞につくと、変化の継続を表す。

変化を表す動詞を変化動詞という。

 ルーザーが死んでいる。

他動詞につくと、動作の継続を表す。

動作を表す動詞、進行形になりうる動詞を動詞動詞という。

 ルーザーが亀田興毅を殴っている。

●テンス(過去・現在・未来を表す文法手段)

・絶対テンス

発話時を基準に前の事態であればタ系、同時またはそれより後の事態であればル系を使う。

殴った/殴る

吹いた/吹く

・相対テンス

朝出社するために電車に乗ったときに黒人ラッパーに絡まれたことを言いたいとき、

 出社するとき、電車で黒人ラッパーに絡まれた。

と表現する。

過去の出来事だけど「出社するとき」と未来を表す「出社する」を使う。

これは、二つ以上の文から成る複文に現れる。

・従属節 出社するときに

・主節 黒人ラッパーに絡まれた

※日本語の複文では必ず後が主節となる

絶対テンスでは発話時がル系とタ系を決める基準だったのが、相対テンスでは主節の起きているときが基準点となる。

黒人ラッパーに絡まれる→出社する という時間軸になるので、主節より後に起こる従属節はル系になる。

 出社したとき、黒人ラッパーに絡まれた。

だと、出社→黒人ラッパーに絡まれる という時間の流れになる。

●さぁ、買った、買った!という掛け声

この「買った」は買うという行為がすでに実現したとすることで相手を促す効果があるのだとか。

●ご注文は以上でよろしかったでしょうか

以前に了解したことを確認すると考えれば間違った使い方ではない。(個人的にはキモイと思うけど)

●内的状態動詞

現在の状態でありながらタ系を使う動詞。

話者の認識が加わることで特殊な表現になっている。

 そいつぁ困ったなァ

みたいな。

他には、あきれた・安心した・驚いた・etc

●ムード

文のパーツで組み上げられたコトを生きた文にするのがムードの役割。

・対事的ムード:コトに対して自分の気持ちを述べる

・対人的ムード:コトの内容を相手に働きかける

 ルーザーさんは超カッコイイそうだ。

だと、ルーザーさんが超カッコイイという伝聞(コト)に対する判断なので対事的ムード、

 ルーザーさんをぶん殴りましょうか。

ルーザーさんを殴るコトを相手(聞き手)に働きかけているので対人的ムード。

Oにストロークが付いた文字。

デンマーク語、ノルウェー語、フェロー語で使用されるラテン文字である。

ゼロを表す言語学の記号。

●「は」と「が」の使い分け

・ルーザーさんはカッコイイ。

・ルーザーさんがカッコイイ。

は:一般論である情報を表す旧情報

が:聞き手にとって新しい情報を表す新情報

を表すことで使い分ける。

最初にルーザーさんが出てくる新情報では「が」、以降の特定化されたルーザーさんについては旧情報なので「は」を使う

ルーザーさんというひとがいました。(新情報)

ルーザーさんは社畜でした。(旧情報)

これは英語のa/anとtheの関係と重なる。

は:は主体を表すムード

が:は中立描写文

●願望のムード「〜たい」&感情形容詞

「〜たい」は話者の気持ちを表す表現なので、話者以外の人には使えない。

感情形容詞は感情や感覚を表す形容詞で、一人称の気持ちを表すもの。

それ以外の人の気持ちを表すことはできない。

×ルーザーさんは亀田興毅を殴りたい。

○ルーザーさんは亀田興毅を殴りたいようだ。

※文脈しだいで伝わるだろうけど文単体ではオカシイ。

でも過去形にすると、現在までの本人の気持ちを確認できるので表現りしてOKになる。

 ルーザーさんは亀田興毅を殴りたかった。

●サピア・ウォーフの仮説

「どのような言語によってでも現実世界は正しく把握できるものだ」とする立場に疑問を呈し、言語はその話者の世界観の形成に差異的に関与することを提唱する仮説。

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言語には、その民族の世界観やメンタリティが込められている。

日本語を言語学的にじっくり分析してみると、日本人の精神が見えてくるというわけだね。

本格的に文法を勉強したくなってきました。

いまの会社をクビになったら、日本語文法を勉強して外国人に日本語を教えてあげる仕事に転職します。

↓その他、いずれ読んでみたい日本語文法の本

同じ著者の『考えて、解いて、学ぶ 日本語教育の文法』

三上章『象は鼻が長い――日本文法入門』